残業代の固定給(みなし残業)は違法になる可能性あり?トラブルを防ぐ正しい決め方(社会保険労務士)
「毎月、基本給とは別に『固定残業代』を支給しているから、うちの残業代計算はバッチリ!」
そう安心していませんか?
実は、労働基準監督署の調査や、退職した従業員からの未払い残業代請求で、トラブルになりやすく、かつ会社側が負けやすい(違法と判断されやすい)のが、この「固定残業代(みなし残業)」の制度です。
せっかく毎月手厚く手当を支払っているのに、運用のルールを一つ間違えているだけで、後から何百万円ものバックペイ(過去に遡った未払い金の支払い)を命じられるケースがあります。
今回は、固定残業代がなぜ違法と言われやすいのか、そしてトラブルを防ぐための「正しい決め方」をわかりやすく解説します。
なぜ?固定残業代が「違法」と判断されやすい3つの理由
「毎月定額を払っている=どれだけ残業させても定額でOK」という誤解が、トラブルの最大の原因です。裁判や労基署の調査でNGが出やすいのは、主に次の3つのパターンです。
① 「何時間分か」が明確になっていない
基本給の中に、なんとなく残業代が含まれているような契約は完全にNGです。
- NG例: 「月給30万円(残業代含む)」
- OK例: 「月給30万円(基本給24万円+固定残業手当6万円・月30時間分)」
このように、「手当の金額」と「それに対応する残業時間」が雇用契約書や就業規則でハッキリ区別されていることが絶対条件です。
② 固定分を超えたのに「差額」を支払っていない
ここが一番勘違いされやすいポイントです。
例えば「月30時間分」として固定残業代を払っている場合、実際の残業が15時間しかなくても、会社は固定の満額を支払う必要があります。
しかし、実際の残業が35時間になった場合は、超えた5時間分の差額を「その月の給与」で追加支給しなければ違法になります。
③ 最低賃金を下回っている
「基本給を低く抑えて、固定残業代を多めにつけよう」とした結果、基本給を労働時間で割ったときの時給換算額が、地域の最低賃金を下回ってしまっているケースが意外と多く見られます。これも一発で違法とみなされます。
トラブルを未然に防ぐ!正しい固定残業代の「4ステップ」
では、会社を守り、従業員にも納得してもらうためにはどうすればいいのでしょうか。正しい導入・運用のステップは以下の4つです。
1.雇用契約書・就業規則の文言を整備する:最重要の土台作り。
契約書や就業規則に「何手当が」「何時間分の時間外労働の対価として」「いくら支払われるか」を明記します。また「時間を超えた場合は差額を支払う」という文言も必ずセットで記載します。
2.給与明細で「基本給」と「手当」を分ける:毎月の明示。
給与明細の上でも、基本給の項目と「固定残業手当(または職務手当など)」の項目を完全に独立させて表示します。
3.毎月の「実際の労働時間」を正確に把握する:みなしでも打刻は必須。
「固定だから時間を測らなくていい」は通用しません。タイムカードや勤怠システムで日々の労働時間を1分単位で記録・管理します。
4.月末に「超過分の計算」と「差額支給」を行う:毎月のルーティン。
実際の残業時間が、固定枠(例:30時間)を超えていないか毎月チェックします。超えていれば、その月の給与計算で必ず「超過割増賃金」として差額を上乗せして支払います。
まとめ:仕組みが「グレー」だと感じたら、早めの見直しを
固定残業代制度は、正しく運用すれば「毎月の給与計算の手間が省ける」「従業員も、早く仕事を終わらせるほど得をする(短い時間でも満額もらえるため)」という、会社・社員双方にメリットがある素晴らしい制度です。
しかし、その裏には「厳格な法適用のルール」があります。
経営者のみなさまへ
「うちの雇用契約書の書き方、本当に大丈夫かな…?」
「今の基本給と手当のバランス、最低賃金をクリアしているか不安」
そう少しでも感じたら、大きなトラブルに発展する前に、一度当事務所へご相談ください。現在の就業規則や契約書をリーガルチェックし、御社の実態に合わせた安心・安全な給与制度へのアップデートをお手伝いいたします。
