
飲食店を営業したいという人や企業は沢山あり、さまざまな質問や相談が寄せられます。そこで、飲食店営業許可について簡単に解説します。
飲食店営業許可
飲食物を提供する際は必ず管轄の保健所に申請して許可を受ける必要があります。飲み物だけを提供する場合やかき氷の販売、コップ式の自動販売機の設置でも同様です。
手作りパンに飲み物を提供するベーカリーカフェやバー、キャバクラを開業する場合も、同様に飲食店営業許可が必要です(手作りパンの持ち帰り販売には、菓子製造業許可が、仕入れたパンの持ち帰り販売には食品販売業許可が各々別途必要となります)。
飲食店営業許可の要件
飲食店を開業するためには、以下の要件が必要です。
- 開業が可能な場所であること
- 欠格要件に該当しないこと
- 施設要件を満たしていること
- 食品衛生責任者を設置していること
- 保健所職員の施設立入検査を受けること
次項から、各々の項目について解説します。
開業が可能な場所であること
風俗営業の許可を受けるためには開業場所について厳しい制約がありますが(風俗営業の項をご覧ください)、一般的な飲食店でも用途地域によって、開業についての制約があることは意外と知られていません。
まず、飲食店は、工業専用地域には開業できません。
住居専用地域には店舗専用建物の建設はできませんし、既存の建物全体を店舗として使用することもできません。
住居専用地域に店舗併用住宅として開業する場合は、第一種低層住居専用地域では、店舗部分が建物の延べ床面積の2分の1未満で、かつ、店舗部分の面積が50㎡以下でないといけません。
第二種低層住居専用地域の場合でも店舗部分は50㎡以下である必要があります(喫茶店は150㎡まで可)。
この50㎡という面積は、厨房や便所も含めた面積なので、飲食店としてはかなり狭小であるといえます。開業する場合は、その場所についてもよく検討することが必要です。
尚、開業可能な用途地域や店舗部分の面積その他については、許可する自治体や時期によって特定の決まりや例外などがありますので、実際に開業を検討する際は、必ず事前に開業場所を管轄する保健所に確認を取ることが必要です。
欠格要件に該当しないこと
飲食店を個人が営業する場合は事業主が、法人が行う場合は業務を行う役員が(該当者が一人であっても)、下記のいずれかに該当する場合は営業許可を受けることが出来ません。
- 食品衛生法又は同法に基づく処分に違反して刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して2年を経過しない者
- 食品衛生法第55条第1項又は第56条の規定により許可を取り消され、その取消しの日から起算して2年を経過しない者
と規定されています。該当するかどうか微妙な場合は、保健所か行政書士などの専門家に必ず相談しましょう。
施設要件を満たしていること
施設要件については以下の通りですが、管轄する保健所によって若干の違いがあります。
- 作業場(厨房のこと)専用の消毒装置と手洗器があること
- 便所専用の消毒装置と手洗器があること
- 作業場と客席(室)及び便所とは区画戸で区画されていること
- 作業場と客席(室)両方に換気設備があること
- 客席(室)の明るさは10ルクス以上、作業場の明るさは50ルクス以上あること
- 作業場の床は耐水材・不燃材であること(コンクリート・タイル等)
- 作業場の壁(床から1m)は耐水材・不燃材であること(金属板・不燃樹脂等)
- 作業場及び食材倉庫は防虫・防鼠設備があること(金網等)
- 井戸水を使用する場合は、1年以内に水質検査を受けていること
- 作業場の洗浄槽(シンク)は2槽以上あること
- 食器具の殺菌方法を備えていること(熱湯・薬物等)
- 食器具の収納のために戸付き戸棚があること
- 冷蔵庫には温度計が設置してあること
- 廃棄物容器(ゴミ箱)はふた付きであること
- 作業場と区画された更衣室(およびロッカー)があること
- 清掃器具が設置されていること
施設要件に不安がある場合は、管轄の保健所で事前相談を受けることができます。
読んでいただいた通り、かなり具体的で詳細な要件が指定されていますので、内装工事などを発注する際は、必ず飲食店であることを明らかにしましょう。もし、実績のない内装工事業者や設計事務所などの発注する際は、上記の要件を必ず提示して内容の確認を行う必要があります。
尚、業務用の厨房機器を扱う企業や店舗では、施設要件について熟知されていますし、内装工事なども手掛けている所もありますので、うまく利用すると良いでしょう。
食品衛生責任者を設置していること
忘れられがちなのが食品衛生責任者の設置です。食品衛生責任者は各施設に一人ずつ必要です(店舗が複数の場合はその数だけ必要)。
調理師や栄養士の資格があれば食品衛生責任者になれます。
それ以外の方は、各都道府県・政令市の食品衛生協会が実施する講習を受ければ問題ありません。講習は一日で終わり、試験もありますが形式的なものなので心配は不要です。講習内容は全国で統一されていますから、必ずしも許可を受ける場所で受講する必要はありません。
ただし、月に1~2回の開催で満員だと次回の受講になりますので、開業を決めたらなるべく早めに受講しておくことをお勧めします。
尚、開業までに受講が済んでいない場合は、「必ず受講します」という誓約書を申請時に提出することで許可を受けることはできますが、開業後に講習会のために一日つぶれてしまいますので、必ず開業前に受講しておきましょう。
保健所職員の施設立入検査を受けること
飲食店営業の許可を申請すると、施設立入検査を受けます。検査日は予約制で、飲食店の多い地域ではかなり混んでいますので、申請日からすぐに検査を受けることはできません。
また、検査時には施設要件を備えた工事や什器設備等の設置が全て完了していることが条件なので、注意が必要です(工事が終わっていない、要件に含まれている什器設備が設置されていないなど、未完了の場合は、原則として許可が受けられません)。完了していないものがあった場合、軽微なものは写真の提出等で済むこともありますが、 重要な項目については再検査となり予約の取り直しになります。申請時に見込んだ工事や什器設備等の設置完了がずれ込む場合は、早めに検査日の変更をした方が無難です。
施設立入検査から営業許可証の交付まで約10日かかりますので、開店の告知や印刷物等を用意する場合は、余裕をもった日程を組みましょう。ちなみに、許可証の交付を待たずに営業を開始した場合は、「無許可営業」となり、罰せられますので注意しましょう。
飲食店営業許可の流れ【まとめ】
今まで解説してきた飲食店営業許可の流れをまとめると下記通りとなります。
- 保健所への事前相談(必要な場合のみ)
- 食品衛生責任者の講習申込み・受講
- 工事及び什器設備の発注と工事及び設置完了の日程確定
- 飲食店営業許可の申請と施設立入検査日の予約
- 施設立入検査
- 営業許可証の交付
尚、酒類を提供する店舗での深夜営業を行う場合は「深夜酒類提供飲食店営業届出」が、クラブ、キャバクラ等の風俗営業を行う場合は「風俗営業許可」が必要です。これらの申請をする際には、飲食店営業許可証が必要となります。開店日までにさらに余裕が必要になるので注意してください。
ちなみに、「深夜酒類提供飲食店営業届出」については、別の記事でも解説していますので、そちらも併せてお読みください。
また、飲食店営業許可は図面の作成等も必要です。個人の内装工事業者などで、作成してもらえない場合は、自分で(自社で)作成しましょう(それほど難しいものではありません)。
以上が飲食店営業許可についての解説でしたが、いかがだったでしょうか。「意外と細かい」という印象があったと思います。
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